建物探訪 New&Topics
古い木造の魅力を引き出しながら
新しい世代が、暮らしやすい住まいに再生。
小さい頃から住み慣れてきた家に、ほんの少しの変化と愛情を加えてみる。それによって、素晴らしい表情を見せるようになった自邸に、施主ご夫妻もご満悦の様子。
お施主様がお母様と同居することが決まった時、古民家で生活する不便さについて考えると、このままの状態で住み続けるのはかなり難しいことが判明しました。
けれども、古民家には古民家の良さがある。
この家から感じとれる安らぎや静けさ、夏の日の涼しさは無くしてしまうにはどうにも惜しい、とのお施主様の強い想いから、再生への道のりが始まりました。
打合せにはかなりの時間をかけられました。
そうして出来上がったのは、弁柄塗りを一度剥がし、何度も塗り直しをすることで深みと艶やかさを出した柿渋の柱と梁。連子格子と朱塗り壁は格調高く、訪れた誰もが「日本美」と、そして、一抹の懐かしさを感じとることが出来るでしょう。
リビングには琉球畳、ダイニングの間接照明、そしてNationalの鮮やかな橙色のキッチン「Fit i」(フィットアイ)が見事に調和し、くつろぎの場として見事に再生しました。
さらに、庭もまた日本独特のそぎ落とされた美しさでもって、建物とのバランスをとっています。なによりもお施主様が、一番こだわった部分は玄関でした。「大切なお客様をお迎えする場所であり、家族の一日の始まりと終わりを象徴する場所だから」。
和の気品と構造材の力強さに現代のセンスを融合させ、お施主様の要望もしっかり消化された、和・モダンな家が完成しました。
古くなってしまったから解体する、建て替える、というのは現代の日本においてよく見られる現象です。しかし、何世代もの家族を見守ってきた家には、ぬくもりと人の思い出が詰まっています。
昔、祖母から、物を大切にし、時には我慢しながら使い続けていくことを教わりました。古きよきものから智恵を借り、時代の空気にあった新しい家を再生しながら、つきあっていくことも大切なこと。
そこには今までにない生活のしやすさがあり、趣があり、好みがあります。今回再生したM様邸も、新しい世代の思い出作りが始まり、次の世代につなぐ配慮が感じられます。そして何よりも祖先の思いをいつまでも大切に守り続けられることでしょう。
【建築データ】
所在地/滋賀県米原市朝日
家族構成/祖母+夫婦+子供2人
構造/木造二階建
竣工/2007年2月
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